エルリック兄弟をタッカー宅へ送り届けて帰ってきたロイが、を呼んだ。
「なんだ。まだ彼らには話していなかったのか。
あんなに親しそうにしておきながら」
「エドたちに話すほどのものじゃないわ。」
「君の研究内容の一部もかね?」
ニヤリと笑む。
は『はぁ』と溜め息をついた。
「大佐も人の悪い。」
「いえいえ。将軍様ほどでは」
L
EADY STEADY GO →21『眩暈』
「よぉ大将。迎えに来たぞ」
「・・・何やってるの?エド?;」
ハボックと供に兄弟を迎えに行くと、そこには巨大犬に押し倒されたエドワードがいた。
「いや、これは、資料検索の合間の息抜きと言うか、なんと言うか!」
「で、いい資料はみつかったかい?」
はっとしてエドが起き上がり、言い訳をすると、タッカーのするどい一言が突き刺さった。
「・・・・・・・・・・また明日来るといいよ」
フラフラしながらエドワードがハボックの後に続く。
は思い出したように振り返った。
「ああ、タッカーさん、もうすぐ査定ですよ。お忘れなく」
「・・・ええ、わかっております」
少し間をあけてタッカーが言う。
その言葉の真っ黒な裏側には気づかなかった。
「俺、が軍服着てるの初めて見た」
帰りの車の中でエドワードが思い出したように言う。
はさきほど軍服の上にきていたブカブカの黒いコートを脱いでいた。
車のなかは少し暑かったらしい。
「ふふ、似合う?」
「うん。似合うよ!」
褒めたのはアルフォンスだ。
エドワードは少し赤くなって口の中でゴニョゴニョ言っている。
「ありがとう」
「・・・・・・・?」
「何?」
「その肩の・・・」
「ああ、コレ?」
エドワードが指差したのは階級を表す肩の章だった。
「お前・・・・・少将だったのか!?」
エドワードが目を見開いて言う。
相当驚いているようだ。
「えぇ!?」
「え?」
「は?」
ちなみに上からアルフォンス、、ハボックである。
「・・・言ってなかった・・・・っけ?」
はすっかり言ったつもりになっていたらしい。
頬をポリポリとかきながら少し冷や汗をかいた。
「聞いてない!言ってない!」
「えー!うっそー。じゃああれは言ったよね?
私が国家錬金術師だってことは」
「聞いてない!」
「あ、僕それは聞いたよ」
「アル!?」
「・・・いい忘れっスね〜・・・姫さん変なトコ抜けてますからね」
「酷い!上司に向かってその言い草・・・」
よよよ、と嘘泣きをしつつ、ハボックにつっかかる。
そのを横目に、エドワードがだらだらと冷や汗をかいていた。
「俺・・よくて曹長あたりかな、って思ってた」
「えー・・それって色々疑問かんじなかったの?」
が首をかしげると、シャラリとイヤーカフスの飾りが音を立てる。
「そりゃぁ。大佐とタメ口だったし(それはオレもだけど)
国家錬金術師の担当なんてつかねぇよなぁ・・・」
「うんうん。」
「・・・さ、それって大佐と一緒に住んでるのと関係あんの?」
とハボックが顔を見合わせた。
「・・・・うーん、それはな?」
「うん。それはね」
「大佐のためっていうか」
「昇進したから、というか」
ゴニョゴニョと2人は言う。
どうも、その中心は隠したい事のようだ。
「・・少尉は知ってるんだ?その理由」
「あぁ、まぁな」
エドワードは軽く眩暈がした。
少尉でさえ知っているのに、何も知らずに旅をしてきた自分に。
こちらの事を全て把握していると言うのに、何一つとして自ら話そうとしないに。
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