カツ カツ カツ カツ

無情にも聞こえる音が長く静かな廊下に響いた。

「のっとられたのはニューオプティン発、特急04840便
 東部過激派『青の団』による犯行です」

いやに冷静な声。

「声明は?」

こちらもまたしかり。

「気合の入ったのが来てますよ。
 よみますか?」

「いや、いい」


チャッ


とたんに、騒がしい物音、人の声、機械音。


「どうせ軍部 ( われわれ ) の悪口に決まってる」

歳若い青年にしか見えない29歳、ロイ・マスタングは言った。

「ごもっとも」

中尉が珍しく、同意した。






LEADY STEADY GO →15『トレイン・パニック*前編』








「あー、本当に家族で乗ってますね。ハクロのおっさん」

くわえ煙草がトレードマークのジャン・ハボックが、何気なさそうに言う。
その隣で、ロイが溜め息をつきながら、乗客名簿に目を通した。

「まったく・・・東部の情勢が不安定なのは知ってるだろうに。
 こんな時にバカンスとは・・・」

その名が目に入った途端、ロイは、にやりと微笑んだ。

「ああ諸君、今日は思ったより早く帰れそうだ。
    鋼の錬金術師が乗っている


その後で、気づいたようにハボックが言った。






「・・・その下の名前って、じゃないっスか?」

「「「「「「「「なにぃぃぃぃぃぃ!?!?!?」」」」」」」」















ガタン ガタン ガタン タタン  ガタンタタン

音を立てながらも、列車は快調に走り続けている。


か―――――          すぴ―――――


2つの寝息が絡む。
肩を寄せ合って眠るのは、国家錬金術師のエドワード・エルリック、
銃器を持った男は飽きれたように言った。

「この状況でよく寝てられんな、ガキども。
 オイ!

男が銃の先でエドワードの頬をつつく。

「起きろコラ!」

すぴ――――――――

しかし一向に起きる気配はない。
男は自分ひとりが問い掛けるこの状況に腹を立てたのか、それとも生来短気なのか、すぐに声を荒げた。


「ちっとは人質らしくしねぇか、この・・・・
 チビ!!


くわっ!!

その禁句に、エドワードが目を覚ました。







「・・・・何があったの?」

目を覚ましたが問う。
エドワードの横にいたはずなのに、いつの間にか身体を支えていたのはアルフォンスだった。

「どうやらトレインジャックにでくわしたらしいぜ」

エドワードは倒れている男の胸倉をつかみつつ言った。

「・・・なるほど。」

は大きく欠伸をした。


「俺達の他に機関室に2人、1等車には将軍を人質に4人・・・」

「ちょっとまって!?人質・・将軍って誰よ!?」

が問う。
もし、自分が世話になった将軍だったりしたら、困る。

「誰が答えるか」

「答えろ。」
が男の腹をヒールのかかとでグリグリと踏みつける。

「うごぉっ!!は、ハクロ将軍だ。あと、一般客車の人質は数箇所に集めて4人で見張ってる」

「・・・ハクロ・・・」

がつぶやく。
(あのおっさん、キライなのよね。イヤミっぽいし、愚痴っぽいし)

エドワードはハイジャック犯の一味に更に吐かせにかかっているところだった。





「なんでもついてくるの?」

アルフォンスの右腕をぎゅっとだきしめて、がついてくる。

「1人だけおいてけぼりなんて、死んでもゴメンだよ」


もう二度と、あんな思いはしたくないから。


「でも、危ないよ?」

「大丈夫。私、軍人だもん。」

「デスクワークとは、ワケが違うよ?」

「大丈夫大丈夫、錬金術師だし。」

があっけらかんと笑った。
一瞬、アルが固まった。


「ええぇぇ!?」

「れ?言ってなかったっけ?」

「聞いてないよ!;」

「2つ名は『水空の錬金術師』」

は胸元に下げている鎖をひっぱりあげた。

大総統府紋章の銀時計。

国家錬金術師の証、そして、軍から逃れられない鎖。


(もっとも、軍から逃げたとして、私には行く場所なんてないけれど)


「・・・さ、いこっ!アル!これで置いてけぼりにはできないでしょ?」









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