その日私は夢を見た。
あのカヤル少年は、あまりにも似てたからかもしれない。
私の大好きだった、
家族中でもっとも愛された弟に。
L
EADY STEADY GO →11『故郷−ふるさと−』
「ひでぇ・・・・」
そう誰かが呟いたのが聞こえた。
焦げ臭い匂いと、ほぼ鎮火してきた炎が、微弱にも赤く光っている。
昨日、あんなにしっかりとたっていた柱が、ただの墨となって、黒く変色していた。
「昨日の夜、ヨキの部下が親方の店の周りをうろついていたの
俺見たぞ」
「畜生・・・汚ぇマネしやがる・・・」
そう悪態をつくのはこの街の人々がこの店が好きだったからだ。
あんなに気丈だったみせの女将さんが看板を抱いて泣き崩れている。
「・・・・親父が錬金術をやってたのは、この街を救いたかったからなんだ」
カヤルは座り込んでいる。
その表情は落胆していることが隠しきれて居ない。
いや、隠すつもりも無いのかもしれない。
「なぁエド、あんた黄金を練成できる程の実力者なんだろ?
ぱっと練成して、親父・・・街を救ってくれよ・・・!」
「だめだ」
カヤルの願いを、エドワードは一瞬で斬った。
「そんな・・・いいじゃないか
減るもんじゃなし!
」
ズキンッ
の心が痛んだ。
この少年はしらないのだ。等価交換が何であるかを。
何かを無くさず、何かを作り出すことはできない。
無から有を生み出すことは不可能なのだ。
「錬金術の基本は「等価交換」!
あんたらに金をくれてやる義理も義務もオレにはない」
「てめぇ・・・・・・」
エドワードは、感情なんてまるでないように言い放つ。
カヤルはぎゅっと拳を握り、エドの胸倉をつかんだ。
「てめぇ、それでも錬金術師か!!」
「「錬金術師よ大衆のためにあれ」・・・・・・か?」
エドワードが言う。
「ここでオレが金を出したとしても、どうせすぐ税金に持っていかれ終わりだ。
あんたらのその場しのぎに使われちゃこっちもたまったもんじゃねー」
言い方は荒い。けれどそれは確かなことだ。
「そんなに困ってるなら、この街出てちがう職さがせよ」
エドワードの言葉が突き刺さった。
しかし、誰もそれに同意しようとは思わない。
「小僧、おまえにゃわからんだろうがな
―――――
炭坑が俺達の家で棺桶よ
」
は軽く目を閉じた。
思い出される、自分のふるさと。
もう帰る場所は無いけれど。
それでも、故郷。
「エドッ!」
「兄さん待ってよ!
本当にあの人達頬っておく気・・・」
「
アル、
このボタ山、どれくらいあると思う?」
「?1トンか・・・2トンくらいあるんじゃない?」
「・・・エド・・・何する気?」
「・・・・よーし、今からちょいと法に触れる事するけど、おまえら見て見ぬふりしろ」
エドワードはトロッコによじ登る。
「「へ!?」」
アルフォンスが焦ったように言う。
「・・・それって共犯になれって事?」
「ダメか?」
エドワードは両手をパンッとあわせた。
「ダメって言ったってやるんでしょ?」
練成の光。
は少し目を細めた。
「なぁにバレなきゃいいんだよ。
バレなきゃ」
「・・・私、一応軍人なんだけど。」
「だまっといてくれ。頼むぜ??」
「やれやれ。悪い兄を持つと苦労する・・・」
「ホントにね。」
あきれたように、とアルフォンスは溜め息をついた。
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